「AIで作った画像を、自社サイトのアイキャッチやバナーに使っても大丈夫?」
結論からいえば、AI生成画像をWebサイトで商用利用すること自体は可能です。 ただし、「利用しているAIサービスが商用利用OKだから、そのまま使っても大丈夫」と考えるのは危険です。
AI画像を公開するときは、主に「AIサービスの利用規約」と「生成した画像そのものに第三者の権利を侵害する問題がないか」の2つを確認する必要があります。さらにECサイトや広告では、著作権とは別に景品表示法などが関係するケースもあります。
この記事では、Adobe Firefly・Midjourney・Canvaなどで生成した画像をWebサイトで使う際に、Web担当者や制作会社が最低限確認しておきたいポイントを実務目線で解説します。
AI生成画像の「商用利用OK」だけでは判断できない
まず知っておきたいのが、「著作権法」と「AIサービスの利用規約」は別物だということです。
利用規約は、AdobeやMidjourney、Canvaなどのサービス提供会社と利用者との間で決められたルールです。「商用利用できるか」「広告に使えるか」「生成した画像をどこまで利用できるか」といった条件が定められています。
一方、著作権法は、生成した画像が既存の著作物を侵害していないかなどを判断する法律です。
つまり、「規約上は使えるけれど、法律上は問題になる」ケースもあり得ます。
たとえば、利用規約上は商用利用できる条件を満たしていたとしても、生成した画像が既存のキャラクターやイラストに強く依拠し、表現も類似している場合には、著作権侵害が問題になる可能性があります。
文化庁も、AI生成物を利用する場面では、既存著作物との「類似性」や「依拠性」などを踏まえて著作権侵害の有無を判断する考え方を示しています。
そのため、「商用利用OKと書いてあったから使った」だけでは十分ではありません。
①利用しているAIサービスの規約と、②実際に生成された画像。この2つを分けて確認することが基本です。
Adobe Firefly・Midjourney・Canvaは何が違う?
AI画像生成サービスは、どれも同じ条件で商用利用できるわけではありません。ここでは、Web制作で利用する機会の多い3サービスの違いを簡単に整理します。
Adobe Firefly
Adobe Fireflyの特徴は、企業・商用利用時の知的財産リスクを意識して設計されていることです。
Adobeは、Fireflyの生成AIモデルについて、Adobe Stockなどのライセンスされたコンテンツや、著作権保護期間が終了したパブリックドメインのコンテンツなどを学習に使用していると説明しています。そのため、自社サイトや広告など、企業用途でAI画像を使いたい場合には比較的検討しやすいサービスです。
ただし、現在のFireflyではAdobe自身のモデルだけでなく、外部のパートナーモデルも利用できます。
そのため、「Fireflyで作ったか」だけではなく、「どのAIモデルで生成したか」まで確認することが大切です。
Midjourney
Midjourneyを企業で使う場合に注意したいのが、会社の売上規模と契約プランです。
現在の利用規約では、年間売上100万米ドルを超える企業またはその従業員が生成物を所有するためには、ProまたはMegaプランへの加入が必要とされています。
また、Midjourneyは基本的にオープンなサービスで、通常は生成したコンテンツが公開・リミックス可能です。非公開機能であるStealth Modeについても利用できるプランが限られます。
そのため、公開前の商品画像、広告クリエイティブ、クライアントの未公開案件などで使用する場合には、商用利用だけでなく公開範囲まで確認する必要があります。
Canva
Canvaは、AI生成だけでなく写真・イラスト・テンプレートなどを組み合わせてデザインを完成させることが多いため、少し考え方が異なります。
AIで生成した部分だけを見るのではなく、Canvaライブラリから使用した写真やイラストなどのライセンスも確認する必要があります。
たとえば、Canva内の写真をAIで加工したからといって、その写真自体の権利が自分のものになるわけではありません。使用した素材には、引き続きCanvaのコンテンツライセンスが関係します。
「Canvaで作ったから全部自由に使える」と考えず、AI生成部分と既存素材を分けて確認するのがポイントです。
AI画像を公開する前に確認したい4つのポイント
では、実際にAI画像をWebサイトへ掲載するときは何を確認すればよいのでしょうか。
難しい法律を毎回読み込む必要はありません。まずは、次の4項目を公開前のチェックリストとして使ってみてください。
1. その用途で商用利用できるか
最初に確認するのは、利用しているAIサービスの規約です。
ここで注意したいのが、「商用利用可」という一文だけで判断しないことです。Webサイトのアイキャッチ、広告バナー、SNS広告、自社ロゴ、商品パッケージ、グッズ販売など、用途によって利用条件が異なる場合があります。
自分が契約しているプランと、実際に使いたい用途の両方を確認しましょう。
2. 既存作品に似すぎていないか
AIで一から作ったつもりでも、既存のイラストやキャラクターなどに似た画像が生成される可能性があります。
特に、「○○というキャラクターっぽくして」「○○という作品と同じ雰囲気で」といった、特定の作品を強く意識した指示には注意が必要です。
気になる画像については、Googleレンズなどの逆画像検索を使って似た画像がないか確認する方法もあります。ただし、検索結果に何も出なかったから必ず安全というわけではないため、あくまで確認手段の一つとして活用しましょう。
3. 実在する人物に似ていないか
「架空の20代女性」と指定してAIで生成した画像でも、偶然実在する人物に似る可能性があります。
企業サイトのメインビジュアル、採用サイト、広告モデル、商品の推薦者のように見える使い方では、特に注意が必要です。実在人物だと認識される場合には肖像権が、著名人の場合にはパブリシティ権などが問題になる可能性があります。
人物を大きく掲載する場合は、公開前に複数人で確認しておくと安心です。
4. ロゴ・ブランド・外部素材が混ざっていないか
AIが意図せず企業ロゴのようなマークやブランド名らしき文字を生成することもあります。
また、Canva素材、ストックフォト、購入したイラスト、フォント、クライアントから支給された画像などを組み合わせている場合は、それぞれのライセンスも確認します。
特にロゴや商品パッケージとして使用する場合には、J-PlatPatなどを使った商標の確認も検討しましょう。
Web制作会社なら「どう作ったか」を残しておく
AI画像を継続的にWeb制作で使うなら、制作記録も残しておくことをおすすめします。
毎回詳細な資料を作る必要はありません。使用したAIサービス・モデル、生成日、プロンプト、参照画像、加工前の画像、外部素材のライセンス、公開前の確認担当者などを追える状態にしておくだけでも管理しやすくなります。
特に、既存の写真やイラストをAIへ読み込ませた場合には、その画像をAIに入力して利用できる権利があったかを確認しておきましょう。
クライアント案件の場合は、AIを利用した素材であることや、Webサイト以外に広告・印刷物・商品パッケージなどへ二次利用する可能性があるかを共有しておくことで、納品後の認識違いも減らせます。
もちろん、記録を残していれば著作権侵害にならないという意味ではありません。
記録する目的は、「誰が・何を使い・どのように確認して公開したのか」を後から追える状態にすることです。
ECサイト・広告では著作権以外にも注意
ECサイトや広告でAI画像を使う場合には、もう一つ重要なポイントがあります。
それが景品表示法です。
ここで重要なのは、「AIで作った画像かどうか」ではありません。その画像を見た消費者が、実際の商品やサービスについてどのような印象を受けるかです。
たとえば、次のようなAI加工には注意が必要です。
・料理の具材や量を実物より増やす
・化粧品使用後の肌を実際以上にきれいに見せる
・ホテルの客室を実物より広く豪華に見せる
・実際には付属しない商品を画像内に追加する
・商品の色や質感を実物より大幅に美しくする
実際の商品より著しく優良であると消費者に認識させる表示は、景品表示法上の「優良誤認表示」に該当する可能性があります。
また、「AIが勝手に生成した」「担当者が間違えて掲載した」という理由だけで問題を避けられるとは限りません。公開する前に、商品・サービスの実態と画像表現が食い違っていないかを事業者側で確認することが重要です。
「画像はイメージです」と書けば大丈夫?
「画像はイメージです」という注記も万能ではありません。
小さな注意書きを入れていても、画像全体から「実際の商品もこのような見た目だ」と消費者に認識される場合には、問題が解消されない可能性があります。
そのためECサイトでは、商品の形・色・サイズ・量・性能など、購入判断に関わる部分を実物と食い違わせないことを基本にすると分かりやすいでしょう。
商品そのものは実物写真を使用し、背景や装飾部分だけAIで生成するといった使い分けも一つの方法です。
法律上の問題だけでなく、届いた商品と掲載画像が大きく違えば「写真と全然違う」というクレームや、ブランドそのものへの不信にもつながります。
AIは商品を「実物以上に良く見せる道具」ではなく、実物の魅力を伝えるための補助ツールとして使うのが安全です。
AIの利用規約は「一度確認して終わり」にしない
AIサービスは、機能だけでなく利用規約や契約プランの内容も変わります。
そのため、会社で継続的にAI画像を使う場合は、「どのサービスを何に使っているのか」を簡単に管理しておくと便利です。
たとえば、次のような情報です。
・利用しているAIサービス
・使用しているAIモデル
・利用目的
・契約プラン
・最後に規約を確認した日
・利用規約のURL
特に「契約プランを変更した」「新しいAIモデルを使い始めた」「今までと違う用途に使う」「サービスから規約変更のお知らせが届いた」といったタイミングでは、改めて利用条件を確認しましょう。
すべての利用規約を毎週チェックする必要はありません。
大切なのは、「何か変わったときに確認できる状態」を社内で作っておくことです。
また、サービス提供会社の規約だけでなく、文化庁などの公的機関が公開しているAI・著作権関連の情報も定期的に確認しておくと、最新の考え方を把握しやすくなります。
まとめ|AI画像は「使えるか」より「どう使うか」が重要
AI生成画像は、Webサイト制作のスピードや表現の幅を大きく広げてくれる便利なツールです。
一方で、「AIで作った=自由に使える」「商用利用OK=何にでも使える」わけではありません。
Webサイトへ公開する前には、最低限次の4点を確認しましょう。
- 利用しているAIサービスの規約上、その用途で使えるか
- 既存の著作物に問題となるほど似ていないか
- 実在人物の権利を侵害する可能性がないか
- ロゴ・商標・外部素材など別の権利が含まれていないか
ECサイトや広告の場合は、さらに**「実物より良く見せすぎていないか」**という視点も必要です。
AIだから特別に怖がる必要はありません。ただし、完全なノーチェックで使うのではなく、通常の写真やイラスト素材と同じように、出所や利用条件、第三者の権利を確認して公開することが重要です。
適切な確認フローさえ作っておけば、AI生成画像はWeb制作において非常に便利な選択肢になります。
※本記事は、AI生成画像をWebサイトで利用する際の一般的な考え方をまとめたものです。個別案件に対する法的助言ではありません。権利関係や契約条件の判断が難しい場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。