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『マネーの拳』に見る一点集中の経営戦略

2019-03-21

『マネーの拳』という漫画をご存知だろうか。
あの『ドラゴン桜』の作者三田紀房が、受験ではなく会社経営をテーマにして描いた漫画だ。


もう10年以上前に連載された漫画だが、最近はじめて読んだ。
これがとてつもなくおもしろい。


主人公の花岡 健はボクシングの元世界チャンピオン。現役引退後に居酒屋経営を始めるが赤字続き。それがふとしたきっかけで、裁縫工場を引き取ることになりTシャツメーカーの経営へ転身する。

そこから紆余曲折を経てTシャツ専門店を開業。都内に出店攻勢をかけて、やがて株式上場を行い、世界規模のアパレルブランドになるというストーリーだ。


大企業からの激しいプレッシャー、社内メンバーの様々な人間模様など、非常に読み応えがあるのだが、中でも印象に残るのが、経営のド素人がいかに会社を成長させていくかという経営戦略だ。


『1年中Tシャツだけ売るなんて見たこともない。だからいい。どこにもでもあるような店ならやる意味はない。』

まず、花岡拳の店T-BOXは、Tシャツしか売っていない。

1店舗目の出店当初は「Tシャツしか売ってないのか」「他のアイテムとあわせて見れない」とユーザーから不評。
社内でも様々なアイテムを出すべきという意見出ていた。

これを花岡拳は「必ず成功する」としりぞける。
その上、この時点で2店舗目以降の計画的な出店を画策し、スタッフの反発を買う。
私のような一般人にはとても考えられない戦略だ。


しかし、花岡は「ひとは1番のものしか覚えていない」という言葉の通り、Tシャツで一番になることを目指したのだ。
結果的に、季節が夏に近づいたことと品質のよさから少しずつ客足が増え、ターゲットを若い女性に絞った新素材のアイテムがブレイク。銀行からの融資を取り付け、一気に出店ラッシュをかけていく。

「TシャツならT-BOX」というブランドを作ることで、アパレル業界に確固たる地位を築くことに成功する。


普通の経営者は、事業を一つに絞ることは大きなリスクに感じる。
だから売上が少しでも上がるのであればと、あれもこれもと手を広げがちだ。
これが大手大企業なら、十分な資本で多角経営を行えるのだが、中小企業は違う。


ヒト・モノ・カネといった、ただでさえ少ないリソースが分散され、どの事業も中途半端になる。会社としても何をしている会社なのかわからなくなってくるので、ブランド化できない。


重要なことは何かの分野で1位になることだ。


例えば、日本で一番高い山は「富士山」、大きい湖は「琵琶湖」と答えられても、二番目を答えられる人は少ない。
美味しいカレーを食べたいときに、カレー専門店とファミレスなら、カレー専門店に行く人が圧倒的に多い。


「より少なく、しかしより良く」


中小企業の経営戦略で最も重要なことは、「何をするか」と同時に、「何をしないか」を決めることだろう。
「なんでもやります」は「なんにもできない」のと同じだ。


「作って売る、これが商売の基本で一番強い。」

蛇足になるが、もうひとつT-BOXが成功した背景に、自社でTシャツを製造していたことがある。


自社で裁縫し、自店舗で販売するので、商流の川上から川下まですべて自分たちで抑えることができる。ただの裁縫工場や、仕入れて売る店舗販売と違い、取引先に影響されず、自分たちの自由に商売ができる。


「作って売る、これが商売の基本で一番強い。」という言葉は、私たちのようなカタチのない「Web」という媒体を扱う業種にぐさりと刺さった。


『マネーの拳』には、その他にも会社経営や事業成長に関する様々な示唆にとんでいる。
会社経営やビジネスモデルに興味のある方におすすめだ。

三田紀房『マネーの拳』小学館 2005

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