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デザイン

AI時代に必要なWebデザインの力とは

2019-03-20

『ただ美しいサイトではなく、結果のでるサイトをつくります。』
『ホームページは24時間働く営業マンです。』


Web制作会社がお客様によく使う常套句で、私自身も口にしたことがある。
Webサイトは、自己満足のアートではなく、ビジネスに役立つマーケティングツールという意味なのだが、最近、これはよいデザインが創れない会社の、いわば逃げ口上ではないかと思うようになった。


なぜなら、これからの時代に求められるWebサイトは、営業窓口として、ただ注文や問い合わせを獲得することではないからだ。
重要なのは、その問い合わせにユーザーの「共感」があるか否かである。


ユーザーがその企業の強みや、ブランドの哲学に「共感」した上での問い合わせでないと、
結局条件が合わずに失注したり、価格だけで他社に流れてしまう。


「共感」とはつまり、「この企業がいい、この製品がどうしてもほしい」と強く思う動機だ。
この「共感」を創ることに、Webサイトのデザインは、内発的なアートとして大きな意味を持っている。


一方で、「営業マン=マーケティングツール」というキャッチがクライアントに響くのは、クライアント自身がそれを求めているからに他ならない。
クライアントは、(多くの場合)デザインの良し悪しを判断できない。
要は結果が出ればいい、というのが一般的な考えではないだろうか。


誤解しないでいただきたいのだが、それは間違いではなく、クライアントとして正しい姿勢だ。問題は、クリエイティブの側が「問い合わせや注文さえ取れればいい」と迎合してしまうことにある。


例えば、今後AIが進歩する中でも職業として残るのは、デザイナーなどのクリエイティブな職種と言われている。
Web制作会社もこの範疇に入るだろう。


しかし当のWeb制作側は、近年AIやビッグデータなどのロジックへの傾倒が著しいと感じる。
ユーザーの動き、アクセス数、コンバージョン率…すべてデータで見えるが故に、数値で理論立てて考える『Webマーケティング』が業界の主流になっている。


理由はもちろん、その方が成功率が高く、クライアントも納得感があるから。
例えば、倒産寸前だったUSJが、日本を代表する遊園地に劇的に再生できたのは、当時マーケターとして就任した森岡毅さんによる、極めて高度なマーケティング戦略によることは有名だ。


数値化できないセンスや感性=内発的なアートよりも、ユーザーの趣味思考や、論理的な裏付けのあるロジックの方が説得力があるのは間違いない。
私自身も理論で考えることは根本的に最も重要だと思う。


しかしロジックへの傾倒は、大きな落とし穴を持っている。
AIなどのデータによって導き出す「正解」は、同業他社でもたどり着くことできるからだ。
言葉で説明できない「センス」や「美意識」と異なり、論理は言語化できる。
そして言語化できるということは、それが再現可能であることを意味する。


今まではマーケティングの考え方を用いるだけで、他社よりも抜きん出ることができた。
しかしAIが進歩し、マーケティングのスキルも今後広く普及していくと、ロジックによる優位性の確保は、急速に難しくなってくるはずだ。


マーケティングがある程度できることは、既に前提でしかなくなりつつある。
では、これからのクリエイティブはどのような価値を提供すべきだろうか。
最も優れた例を、Appleに見ることができる。


想像してほしい。いわゆるガラケーしかない時代に、ユーザーの希望や声を一番大切にしていたら?
おそらくスマートフォンは生まれなかったはずだ。

それどころか、スマートフォンが実際に発売された当時ですら、「日本はガラケー文化だから売れない」とすら言われていた。
これはマーケティング的に考えればありえない製品に違いない。


Appleが支持されているのは、「ユーザーがいいと思うもの」ではなく、「私たちがいいと思うもの」を提供しているからだ。
「Think different.」という言葉に代表されるように、そこには確実にAppleの美学がある。
そして、その美学の結実としてアウトプットされるのが、極めて洗練された製品のデザインなのだ。


これからは、「なんのための事業なのか」「どんな理念を持っているのか」その企業のブランドとしての哲学が、
デザインの礎におかれていることが重要になってくる。
これはAppleのような大企業だけでなく、むしろ中小企業の生き残りに重要な要素だと感じる。


マーケティングに基づく「単に問い合わせが多いサイト」は、企業にとってもメリットが少ない。
そういうユーザーは、条件次第で簡単に別の企業のサービスや製品に流れる上に、
問い合わせが獲得できる領域は、マーケティングの力で、すぐにレッドオーシャン化していくからだ。


企業の根幹にある哲学が、デザインとして届けられ、「ここのサービスを使いたい」「この製品をほしい」というように人の心を動かし、共感をもってアクションを引き起こすWebサイトこそ、これから求められるWebサイトの姿だろう。


クリエイティブの職種が生き残ると言われているのは、理論に基づいた「正解」を作れるからではなく、データでは導き出すことのできない人の心を動かす「新しい価値」を生み出せるからなのだ。

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