ジャパンの看板に見るブランドデザイン

コラム

職業柄か、TVCMや電車内の広告、街の看板を見てよく脳内評論をする。
そんな広告でも、大半のものは記憶に残らない。
しかし、大阪に来た9年前、忘れられないインパクトをくれた看板がある。

関西に展開する「ジャパン」の看板だ。

「いったい誰ー!?」
というのが初見の感想。
当時、大阪育ちの奥さんから回答をもらった記憶がある。

「え?ジャパンおじさんやで。知らんの?」

だから誰なんだ…。

更に気になるのがキャッチだ。

「しんらい?さわやか…?」
失礼だが、全く信頼できないし、さわやかでもない。
なんだか油ギッシュなおじさんの熱い視線しか感じない。

「し、幸せになろう!?」

もうこうなるとジャパンおじさんの虜である。
普通は「何の店か」をPRするところ、この看板は「おじさんと幸せになろう!」としか書いてないのだ。

初見の方は、これが一体何の店かわからないに違いない。
英語筆記体で書いてる「ディスカウント・センター」、正確には「ドラッグストア」だ。

調べたところ、このおじさんは「さわやか親父」こと創業者の桐間幹二氏がモデルになっているらしい。(大変失礼な発言がありました、お許しください)
今はスギ薬局の系列に吸収合併されているのだが、きっとこのキャッチには、創業者の熱い理念が込められているに違いない。

普通のデザイナーなら、まず「ディスカウントストア」を一番目立たせる。
本屋が「本」という看板を目立たせるのと一緒だ。それが看板のセオリーだ。
店名以外では、「くすり・化粧品」などの取扱商品、または「毎日安い!」などのPRだ。

そこに創業者の似顔絵と理念を持ってくる。明らかに異常だ。インパクトがある。
電通の古川裕也氏が説く、すべての傑作に共通する理由「びっくりさせる力」に通じるものがある。
『すべての仕事はクリエイティブディレクションである。』Web制作目線のレビュー感想参照)

そう、これは極めて高度なブランド化だ。間違いない。
一度見れば忘れられないし、二度目は「ジャパンだ」ということがひと目で伝わる。

最初のデザイン提案は、よっぽど勇気が必要だったのではないかと思う。
これが受け入れられたのは関西という土壌だろうか。桐間氏のユーモアか。
調べてもこのジャパンの看板を「おかしい」「変だ」という記事はネットにあがってこない。
ブランドとして成立し、地域に受け入れられているということなのだろう。

看板ひとつでブランドイメージをつくる。
ジャパンおじさんのさわやかな笑顔を見るたびに、優れたデザインの持つ力を再認識させられるのだ。

関西に来たらぜひ一度訪れてはどうだろうか。
そして、おじさんと幸せになっていただきたい。

ジャパン公式サイト https://www.sugi-net.jp/service/japan.html

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プロフィール
五島 優

ディレクションや仕様設計をメインで担当しています。最近は小学校に通っているうちの子どもをどうやって笑わせられるか研究中。どうして子どもはこんなにう◯こネタが大好きなのか…

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